【田舎者】
「遠~~くから乗ってきてそういう人がいるんだよねぇ」
「でも、君の事を信じよう~!」
佐賀から乗って来たのだが、渋谷から乗り切符を落としたと嘘の申し出をした俺。彼は見抜いていたはず。その優しくまた厳しい目をした国鉄の窓口の駅員さんから130円の切符を貰い晴れて新宿駅の改札を出られる事になったのだ。
ずらりと横に並んだ改札口にはカチカチとリズミカルに切符切りを鳴らす駅員さん。切符を切る時はもちろん、お客さんとお客さんの合間にもカチカチとリズミカルに鳴らし続ける。きっと一日に何万人、いや何10万人の切符を切るのだろう。素振りをしながら人の流れを妨げないように手際よく切符を切っているそのカチカチ音にはびっくりさせられた。東京ならではの光景だ。
(後に知った事だが地方の駅の切符切りの寿命は5年位らしいが新宿駅は一週間程度だったらしい~なっとく)
改札出口へ向かう人の流れに乗り切符を改札口の駅員さんに差し出し颯爽と歩き出した。目的があってその改札を出たわけではない。あてもなくただ吸い込まれるように改札を出たのだ。そしてすぐに目に飛び込んで来たものは「新宿の目」だった。そのガラスのモニュメントが妙に生々しく俺を見ているのだ。テレビドラマとかで見た事があるとそんな事を考えていると、突然後ろの方から唸りを上げてもの凄い波ののうなものが迫って来ているではないか!
紺やグレーのスーツを来た人の大群である。少し逆らってみたものの数百、いや数千人であろう人の波に太刀打ちできなかった。そのまま流れに乗る事にした。
薄暗いガード下を歩く。どう考えてもそのサラリーマンの大群の中で革ジャンにリーゼントの俺は場違いだったが流れに乗るしかなかったのだ。歩く事数百メートル。ガードの切れ間でパッと明るくそして広くなり人の流れが散ってゆく。ようやく流れに解放された。そして上を見上げてみた。
なんとそこには「Gメン75」とか「非情のライセンス」とか「大都会」「西部警察」「太陽にほえろ」「キーハンター」それに「特捜最前線」のオープニングとエンディングとかにも登場した刑事ドラマでよく見ていた高層ビル群があるではないか。高校の修学旅行ではバスの中から見た事があったがこうやって間近にみる事で興奮がさらに高まり自分が東京に居るという事を実感した。
高層ビル群に向う朝のラッシュの人の波に流されて来たのだ。
それに逆らって歩いていた自分がなんと愚かな田舎者だったかと思うと恥ずかしかった。
(1981年12月25日朝)
つづく
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コメント
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ラッシュアワーの新宿は本当に人・人・人ですね。
人波、まさに波って感じです~(>_<)
タケさんの中には、高層ビル群を見上げたタケさんがずっといるんですね。
bebe2号 * URL [編集] 【 2016/01/05 12:18 】
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僕の中にはあの頃の僕がずっといます。
キャラメル王子 * URL [編集] 【 2016/01/09 01:19 】
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